オンラインイベント開催報告
『子どもの権利とスポーツの原則』~現役アスリートと考える、スポーツの価値
8月7日、「現役アスリートと考える、スポーツの価値」をテーマに、『子どもの権利とスポーツの原則』オンラインイベントを開催しました。
遊びやスポーツは、子どもたちの心身の健康や発達に欠かすことのできない「子どもの権利」です。また、スポーツは、持続可能な開発目標(SDGs)で掲げられた開発や平和、健康、教育、公平性、女性や若者の能力強化等の目標にも貢献する重要な鍵であるとも位置付けられています。
2018年11月20日、ユニセフと日本ユニセフ協会は、スポーツが真に子どもの健やかな成長と豊かな人生を支えるものとなることを願って、「子どもの権利とスポーツの原則」を発表しました。その後、スポーツ界やビジネス界で、賛同の輪が広がっています。
新たに4団体が「子どもの権利とスポーツの原則」に賛同
オンラインイベントでは、まず、本年新たに「原則」に賛同を表明された団体のみなさまからご挨拶をいただきました。
- ・ ご挨拶:日本ユニセフ協会 専務理事 早水 研
- ・ クボタスピアーズ チームコーディネーター 石川 充 氏
「新型コロナウイルスの影響で子どもたちのスポーツの場が失われている今だからこそ、原則に賛同し、これまで以上に子どもたちの心身の成長に貢献していきたい。今回の賛同はラグビー関係団体では初。これをきっかけにラグビー界において本原則の内容がより推進されることを願っています」
「少年団の全国大会では試合後に相手を讃えるセレモニーを行い、子どもたちの交流や気づきを促している。子どもが必ずもっているすばらしい可能性に自分で気づくまで、長く応援するという意味で原則に賛同し、原則の実践例を多く集めてスポーツのすばらしさを伝えていきたいと思います」
「空手道は非暴力の精神に基づき、国際交流を通じて世界平和と青少年の健全育成を目指している。原則に大いに合致すると考えています。空手道を通して原則の考えが指導者、子ども、保護者に広がるよう取り組んでいきたいと思います」
「サッカーができない日々で、スポーツの役割について考える中、選手が子どもにとっての最善の指導や環境を学び考える必要があると思い、賛同した。子どもたちとともに学び、考え、よりよい環境を作っていきたい。原則が、スポーツに関わる人々が迷った時に立ち返る場所となることを期待しています」
パネルディスカッション:現役アスリートと考える、スポーツの価値
後半は、現役アスリートの方々を交えて、新型コロナウイルス感染症の影響でスポーツ環境が制限される中であらためて考える、スポーツが子どもにもたらす価値や、SDGsの実現に向けてスポーツが果たすことのできる役割などについて議論しました。
パネリスト
- ・ クボタスピアーズ キャプテン 立川 理道 選手
- ・ ジェフ千葉レディース/なでしこケア 大滝 麻未 選手
- ・ 東京ヴェルディホッケーチーム 及川 栞 選手
- ・ 全日本空手道連盟 事務局長 日下 修次 氏
モデレーター
- ・ 山崎 卓也弁護士 「子どもの権利とスポーツの原則」委員会/Field-R法律事務所
スポーツを通して身につける、相手へのリスペクト
子どもたちにとってのスポーツの価値について、立川選手は、「自己犠牲や思いやりを学べる」「激しい試合の後には互いに握手やハグをする。戦い合ったからこそ、相手チームとも尊敬し合える関係性が作れる。(リスペクトの精神は)ラグビーを通して自然に身につく」、及川選手は「ホッケーには、全力で戦ってくれてありがとう、と試合後に相手を讃える文化がある」と話します。
また、「子ども空手道憲章」の取り組みもある、全日本空手道連盟の日下事務局長からは、「相手への尊重という意味で所作を教える。健康づくり、社会性を身につけること、生活を豊かにすることが、競技・地域・学校における空手に共通すること」と述べました。
子どもたちの指導などにも取り組む選手たち。指導にあたっては「すぐに答えを教えず、同じ目線で考え、一緒に考えて解決策を考えるようにしている」(立川選手)、「質問したくても自分から手を挙げられない子どもには、自分から声をかけるようにしている」(及川選手)と語ります。また、大滝選手は、なでしこケアとして、子どもたちからのセクハラに関する相談にも取り組んでいることを紹介しました。
日下事務局長からは、一方通行になりがちな武道の指導の中で、「次回への意欲をもてる指導」に努めていることが紹介されました。
スポーツが当たり前にできる幸せ、この期間だからできること
新型コロナウイルス感染症の影響でスポーツができない中で、あらためて、スポーツの価値について考える機会になっているのではないか、との山崎弁護士の問いに対しては、及川選手は「ホッケーが当たり前にできる環境が幸せだと思った。ホッケーが生活の一部だと聞くことがうれしかった」、立川選手は「仲間の大切さに気づいたと思うので、活動を再開した時には存分にラグビーを楽しんでほしい」と言います。子どもたちとオンラインで交流する機会を設けたなでしこケアの大滝選手は「この期間にできることをやりたいという、ポジティブな子どもたちから刺激をもらった。誰かと話しながら考えられる、オンラインの可能性を発見した」と述べました。また、日下事務局長からは、日本スポーツ協会の指導に沿って、練習再開や大会開催についてのガイドラインを作成したこと、オンラインで高校生の形グランプリ大会を行ったことが紹介されました。
立川選手はニュージーランド、大滝選手はフランス、及川選手はオランダでプレーした経験から、「小さい時から一つのスポーツに特化しないことで、いろいろな能力に気づき、仲間も増える。スポーツがとても身近にある」(立川選手)、「一人ひとりにあったコーチングが自信につながる。負けても、内容でほめてくれる」(及川選手)、「まず個人あってのチームという考え方」(大滝選手)と、海外のスポーツ環境についても話が及びました。
SDGs達成に果たすスポーツの役割
山崎弁護士は、SDGsが目指す持続可能な社会の達成に、スポーツが果たせる役割はとても大きいと述べます。最後に、スポーツの役割について問われたパネリストたちは、それぞれ、「ラグビーを通じて子どもたちはいいおとなになっていく、今はラグビーがなかなかできない環境だが、今できることをしっかりやって未来につなげていきたい」(立川選手)、「公正さ(フェア)、尊重(リスペクト)、最善を尽くすこと(ベスト)を、教える側も教わる側も再認識したい」(日下事務局長)、「スポーツがコミュニケーションのツールになったらよい。ホッケーが楽しいから続けたい、子どもたちがそう思える環境づくりに取り組みたい」(及川選手)、「サッカーを通していろいろなことを学んだ。いやな思いをする子どもが出ないよう、自分たちも学び、子どもの思いについても学んでいきたい」(大滝選手)と述べました。